地域経済優先

島という土地柄、外部から見ると一つの経済体だと思われますが、漁業、林業、農業、酪農などの産業は生活している環境や時間帯、繁忙期など暮らしのリズムが違います。山と海、西浦と東浦、由良などに移動すると、方言や言い回しまで異なるのは驚きです。今でこそ本州と四国に橋で結ばれていますが、この大きな経済圏の間で島が「橋桁」となり、多くがその良さを知らず通過していることも事実です。公共交通機関が割高で時間やルートが限定されているバスしかないこと、毎日の風景である美しい里山や里海が当たり前であり、新鮮で美味な海産物、農産物、果実、淡路牛などの食材は御食国であったことが証明しているように恵まれている土地柄だという認識が実はあまりないように受け止められます。島ならではの生活風景は対面販売の商店で買い物をすることですが島を出ればどこにでもある特徴のない郊外型の店舗やコンビニの利用は地域通貨を島外に出してしまうことでもあります。

コミュニティーへの配慮としては、地域資源を今一度見つめ直し、地元雇用、地産地消、特産品の優先利用、滞在期間延長のための多様な体験プログラムを造成し、共感する人の輪を広げる場として春陽荘を活用しています。宿泊や催物でご利用のお客様には、地域ファーストで考えて地産地消度の高い飲食店を優先的に紹介する他、脱プラスチックや地域食材で調理するベジタリアン対応など、わたしたちの環境配慮にも協力して頂いております。通学路にも面しているため、学生と利用客にも挨拶をしていただく関係を気付き、ガイド付でない時でも路地歩き用に地図を日本語だけでなく英語やフランス語にも翻訳して作成し、住民のプライバシーや地域が大切にしている神社や寺でのふるまいなど配慮して訪れるようにお願いをしています。定期的に実施される地域清掃にも参加して近隣の住民とのお付き合いを大切にしています。

秋の芸能文化祭では地元中学生による淡路人形浄瑠璃の講演や地域の文化資産を絶やさないために筝曲、落語、浄瑠璃などのパフォーマンス、書道・茶道・華道のお稽古や個展などに利用して頂いております。また宿泊客や一般社団法人春陽荘文化財保存会の会員のみなさまなどによる観光などの事業収入は、文化財の保全利用に限らず、滞在を伸ばすためのプログラム開発や地元資本の食事処情報・体験プログラムの提供を通して地域が潤うための仕組み作りをしています。国際社会からもインターンシップを受け入れ、国際的な視野でもって地域貢献を優先し、100年先も安心して住み続けるまちづくりの一員となって努力をしています。